HB

















 ふたりは、その単語を決して口にしない。
 この歳になって、大の男同士が言うには、どこかむず痒い単語。
 10月13日。
 誕生日と呼ばれる日が、近づいていた。





 互いに、解っていた。
 ヴィンセントは3日後が自分の誕生日だと理解していたし、宝条自身も、 そういえば3日後か、などと考えていた。
 わざわざプレゼントを用意したり、変わったことをするつもりもなかったし、 何より「だからなんだ」と思っていた。
 誕生日? だから?
 そんな気持ち。





 ジュノンのホテルの一室で、ヴィンセントはじっと目を閉じていた。護衛という任務は、 ひどく神経をすり減らす。
 それなのに、彼はどうにも眠ることができない。
 薄く目を開けて、各部屋に備えられてある電話に視線を移す。
 ・・・かけてみようか。
 そんな考えが頭をよぎると同時に、彼は頭を左右に振った。
「なに考えてるんだ」
 言い聞かせるように呟き、彼は身体を起こす。
 苛々した。
 確かに、自分は何も言わずに出てきた。
 誕生日に重なる任務だということを、億尾にも出さず。
 そして宝条も、いつもと変わらぬ様子で――じゃあな、と言うヴィンセントの顔も見ずに―― 自分を送り出した。
 それだけのことに、何をそう苛々しているというのか。
 冷蔵庫を開け、特別飲みたくもないビールの缶開ける。ぷしっという湿った音が、 いやに部屋に響く。
「・・・どうってことない」
 誕生日にひとりで過ごすことなど、どうってことない。
 そうだ。それだけのことだ。
 自分に言い聞かせるようにして、彼はビールを煽る。
 液体であるのに、その炭酸はかさかさしている気がした。





***





 ラボで映画を観ている宝条の背中に、ルクレツィアは心底呆れる。
 時折、ぱりぱりとポテトチップスを齧る音がする。そして、冷めたコーヒーを啜る、ずずっという 音も。
 パソコンのディスプレイに映されているのは、恋愛映画らしい。机の上に開いたまま 放置されているパッケージでわかる。
 それも、若い女が主人公の、陳腐なやつだ。
 宝条の背後から、その画面を覗いてみる。
『あいつ、私の誕生日に別の女を部屋に入れていたのよ!』
 主人公の女が、友人にわめいている。
 オーバーアクションの三流演技だ。
 ばかみたい。
 そう言うかわりに、ルクレツィアは宝条の頭を見下ろす。
「どうして、こんな映画観てるの?」
 返事もなく、宝条はばりばりと頭を掻いた。
 フケが出てきそうな気がして、彼女は一歩退く。
「誕生日だってこと、憶えてるんでしょう?」
『私の誕生日だってことも忘れてたのよ!』
 画面の中の大根女優が叫ぶ。
 ルクレツィアは苛々した。
 机の上には、それ以外にもレンタルしてきたのだろう恋愛映画が、 山のように積み上げられている。そしてその 横には、同じようにどっさりと、ポテトチップス――それも全てうすしお――だ。
「ばかみたい」
 今度ははっきりと言った。
 そしてようやく、宝条の首が振り向く。
 髪の毛はぼさぼさで、無精ひげが伸びている。目の下には隈がある。一昨日から同じYシャツを、 ネクタイもせずに着ている。白衣にはポテトチップスの 食べかすが落ちているし、よく解らないシミもある。
 最低の男だ。恋愛映画で、決して主人公の相手になることはなさそうな男。 雑誌の「嫌いな男」として挙げられそうな男。
 それでもルクレツィアは怯まなかった。
「ばかみたい」
 もう1度言い、なぜか涙が滲んだ。
 こんな男を求めて、ヴィンセントが哀しみに 心を浸していると思うと、無性に悔しかった。
 しかし、宝条は既に、そんな彼女を見てはいない。





***





 2日目の建設現場視察は楽だった。
 ジュノンはいずれ、大きく神羅に貢献する街になるだろう。それを 肌で感じながら、彼は資料をケースに収める。
 現場監督の男に外したヘルメットを返し、大きく呼吸をすると海の 香りが身体を満たした。
「いい街でしょう。海も綺麗で」
「・・・ええ、そうですね」
 このまま街が大きくなれば、その海が失われるだろうということは、 黙っている。
 そこまで口を出す必要はなかった。
 現場監督は、目を細めて陽の沈みゆく水平線を見つめる。
「明日は、プレジデントと一緒に街のご案内ですね」
 まるで確認するように言われ、その仕事を思い出す。
 気が重かった。
(誕生日だというのに)
 不意にそんなことを考えた自分に、彼は再び狼狽する。
 そうだ。誕生日など関係ない。
 自分に言い聞かせ、彼は笑顔で現場監督に頭を下げた。





***





 これで9本目だ。
 ルクレツィアはうんざりしていた。
 なぜ、彼はこうもつまらない恋愛映画ばかりを観るのだろうか。あまりにも 趣味が悪いとしか言いようがないものだから、彼女は「これもいいわよ」と 自分の気に入っているビデオを、何本か持ってきたりした。
 しかし、宝条はそれらに指1本触れていない。
 おそらく徹夜で観ているのだろう。
 せめて風呂に入ってほしいと思ったが、それをさせられるのは ヴィンセントだけだと、彼女は理解している。
 以前のように背後に立ち、腕組みをして画面を見つめた。
 泣き喚くしか能のない女が、箱の中で同じような演技をしている。
 みんな同じに見えるわ。
 返事を待たずに、彼女は踵を返した。





***





 あまりにも豪奢なディナーに、ヴィンセントは感心するよりも先に呆れてしまった。
 街の案内と言っても、それが行われたのは夕方近くになってからだ。本来の 目的は、この接待と言ってもいいような夕食なのだろう。
 プレジデントはこの上なく上機嫌で、ジュノンの今後に かなりの期待を寄せていることを延々と述べ、現場で働く社員たちをも褒めちぎった。
 貸し切りの店を後にする際、ジュノンでの実質の責任者が、湿った声でプレジデントに耳打ちをする。
 ホテルに、女を数人用意しています、とかなんとか。
 ――まるで殿様だ。
 顔を逸らし、ヴィンセントが息をついたとき。
「ひとり、こいつに回してやれ」
 上機嫌を引きずったプレジデントの言葉が、ふりかかる。
 ヴィンセントは、明らかに狼狽をしていた。
 ひとり? それは、女のなかのひとり、ということか?
 彼が遠慮という名の拒否をするより早く、責任者らしい男は先刻と同じように 湿った声で「手配しておきます」と告げた。
「プレジデント、私は・・・」
「今日はお前の誕生日だろう」
 その単語に、言葉が詰まる。
「今回はよく動いてくれたし、祝いだとでも思っておけ」
 たまにはゆっくり休め。
 肩を叩き、プレジデントは悪気なく笑った。





***





 プレジデントではなく、部下の相手をすることになったと告げられたとき、 彼女は小さな失望を感じた。他の女が言ったとおり、 プレジデントのほうがチップがはずみそうだと思っていたからだ。
 しかし、部屋に戻ってきた「部下」を見て、彼女は「こっちで良かった」と すぐに感じた。
 不幸そうな面影の、若く美しい男。
 疲れたように部屋に戻り、彼女を見て、さらに顔に影を落とす。
 そんなところに、好感を持った。
 妻のように男の上着を脱がせながら、女はひっそりと背の高い彼を見上げる。
 なんて、線の細いひとだろう。
 そう思った。
「誕生日だと聞きました」
 自己紹介などせず、彼女は微笑む。
 男は、その単語に困ったように笑うばかりだ。
 胸元を強調した黒いワンピースを着てきたにも関わらず、 男はそんな彼女の肢体に視線を移さない。
「シャンパンを用意したんですけれど、飲みます?」
「・・・じゃあ、頂こう」
 低く、今まで聞いたことのないほど静かな、柔らかい声。
 女は冷蔵庫からシャンパンを取り出しながら、胸を躍らせた。
 今までの相手と違うことは、出会った瞬間に理解できた。
 だからだろうか。
 彼女は素直に、この男に抱かれたいと感じる。
 そしてさらに素直に、この男は抱かないだろうとも、感じる。
 シャンパングラスに、細かい気泡の立ち昇る液体が注がれてゆくのを、 男はじっと見つめている。
 彼が何を考えているのか解らない。
 ただひとつ言えるのは、彼にとって今日は、幸福な誕生日ではない、ということ。
「明日には、お帰りになられるんでしょう?」
「・・・ああ。ここはいい街だから、残念だ」
 残念という言葉が愛想だということは、女も理解する。
 男は上品に、シャンパンを飲んだ。
 この液体が、その美しい身体を流れてゆくのか。
 そう考えるだけで、女はなんとも言えぬ気持ちに支配された。





***





 2杯目のシャンパンを飲み終わると、女はヴィンセントの膝に手のひらを当ててきた。
 黙ったまま、真面目な目で見つめてくる。
 ヴィンセントは彼女を賢い女だと思う。
「私では役不足でしょうか」
「・・・いや」
 ただ、気分じゃないんだ。
 言葉を濁し、ヴィンセントは目を伏せる。
 女は、そんな彼の膝から手を離し、静かに微笑んだ。
「・・・贈り物が届いているんです」
「え?」
 唐突に言われ、ヴィンセントは顔を上げた。
 女は身を屈め、ベッドの下を探る。淡い間接照明の中で、白い乳房が 浮き立っている。
 再び目を伏せたヴィンセントの前に、小さく細長い包みを差し出して、 女は「どうぞ」と微笑む。
 リボンも何もない包装紙を開くと、中からばらばらと鉛筆が転がり出てきた。 それらは皆HBで、1ダースと1本、つまり、13本ある。
「・・・差出人は?」
「解りません。ボーイが届けてきたんです」
 それにしても、不思議ですね。
 女は言い、鉛筆の1本を摘む。
「ただの鉛筆ですものね」
 謎解きをするような、楽しそうな声。
 つられて、ヴィンセントもその鉛筆を観察してしまう。
 ふたりはしばらく、男女の行為というものを忘れたように、その 鉛筆に隠された謎を解明することに没頭した。
「何がか刻まれているわけでもないし・・・」
 ヴィンセントがそう呟いたとき、女が勢い良く顔を上げた。
「解りました!」
「え?」
「HBなんですよ、この鉛筆」
「・・・そうだが、それが?」
「誕生日おめでとう、なんですよ!」
 女は幼さの残る顔に、満面の笑みを浮かべて、HBと書かれた金色の 文字を指差す。
 誕生日おめでとう。
「・・・Happy Birthday?」
 彼は初めて言う言葉を確認するように、ゆっくりと尋ねる。
 女は、嬉しそうに、ほんとうに嬉しそうに、頷いた。





***





 あれほど謎が解けた瞬間嬉しそうに微笑んでいた男は、今、 実に不機嫌な顔で電話のダイヤルを押している。
 きっと、これを贈ってくれた相手だろう。
 女は膝の上で頬杖をつき、その後ろ姿を見つめている。
 恋人かしら。きっとそうね。そんなことを考えて。
「やっぱりおまえか」
 挨拶もなく、男はそう言った。
 紳士的なだけに、ひどく荒々しい言葉に聴こえる。
「こんなことを考えている暇があったら・・・・・・、ちがう、誰もそんなこと 言ってないだろう!」
 甘ったるい感謝の言葉を期待していたのに、そうではないらしい。
「・・・確認しただけだ。じゃあな」
 無機質な声と同時に、男は素早く電話を切る。
 女は驚いたように顔を上げ、すぐに笑った。
「恋人ですか?」
「・・・そんなんじゃない」
 むすっとした男がなんだか可愛く、女はからかうように覗き込む。
「優しくしてあげたほうが、いいんじゃないですか?」
 言われ、男は勘弁してくれと言わんばかりに首をふる。
「こっちが優しくしてほしいぐらいだ」
 と。





***





 きみは、本当にしてほしいことを、いつも言わないから。
 突如としてホテルの一室に現れた男は、そう言った。





***





 ドアを開けた女は、一瞬頭を整理できなかった。
 目の前に立つ謎の白衣の男もまた、不思議そうに彼女を見下ろしている。しかし、 どこか楽しそうに。
「部屋を間違えたかな?」
「・・・どちらさまでしょうか」
「黒い服の男は、ここにいるのか?」
「ええ。あの、あなたは・・・」
 女の質問に答えることもせず、白衣の男はずかずかと部屋に入る。そして、 目的のものを見つめたように笑顔を湛えた。
「きみは、ほんとうにしてほしいことを、いつも言わないから」
 困るよ。ほんとうに。
「・・・なんでお前が、ここに」
「さっき、君が来てほしいと言ったからさ」
「そんなこと言ってないだろう!」
「私には聞き取れる」
 女は、そんな白と黒の会話をぼんやりと聞いていた。
 何がなんだか、理解できない。
 さっき、というのは、電話のことだろうか。
 それならば、この白衣の男が、恋人だというのだろうか。
「映画をね、観たんだ」
 突拍子もなく、白衣の男が呟く。
「・・・映画?」
「恋愛映画の主人公たちは皆、誕生日とクリスマスはどうあっても 恋人と過ごしたいようだったよ」
「・・・・・・」
「恋人に会った瞬間、とても喜んでいたよ」
「・・・・・・」
「きみもそうではないかと、推測したんだが」
 違うのかね?
 学者然とした男の言葉に、赤い目が伏せられる。
「・・・宝条」
「ん?」
「おまえは・・・」
 何かを堪えるような声。
 言うべきことを、なんとか紡ごうとする息。
 女は静かに、ふたりに背を向けた。





***





 今晩には帰らなくてはならないな、と、宝条は囁く。
 そして次の瞬間には、それを忘れてしまったかのように、3日ぶりだと 熱のこもった声で言う。
「たたが、3日だろう」
 ヴィンセントは、こともなげに言う。
「きみは、三流恋愛映画の主人公のように演技が下手だな」
「・・・・・・」
「されど3日、だろう」
 まして君は誕生日なのだから。
「・・・お前こそ、そんなものはどうでもいいという感じだったろう」
「拗ねているのか?」
 おどけたように言い、宝条は彼の口唇を塞いだ。
 この先、彼がどんなに反抗をしようと、いつものように嫌だと連呼しようと、 呆れるほどの意地を張ろうと、奉仕をしようと決めている。
 時間をかけて、ゆっくりと、彼を内から溶かすまでに。





***





 ヴィンセントは寝不足の目をこすりながら、 ジュノンを出るのが昼で助かったと、心から思う。
 熱く薄いコーヒーが、空の胃袋に滲みてゆく。
 昨晩、というより、今朝まで身体を解放して貰えなかった。
 夜のうちに帰ると言ったくせに、宝条が帰ったのは、結局朝の5時だ。考えるだけでも 呆れてしまう。
 宝条だけではない、自分にもだ。
 ベッドに転がった鉛筆を、ぼんやりと眺める。持って帰ろうかどうしようか、 本気で悩んでいた。その内の数本は、行為にまで使われのだ。持って帰れば、 また同じように「記念」とかなんとか言って使うのだろう。
 うんざりだ。
 しかし、ゴミ箱に捨てるのはあんまりだから、海にしよう。
 そう考えながら、ヴィンセントは上着に手を伸ばしたとき。ドアをノックしてくる 音に、彼はその動作を中止した。
 この時間というと、清掃だろうか。
 しかし、プレートは出してあったはずだ。
「どうぞ」
 無防備かと思ったが、そう言ってみる。
 そして部屋に入ってきた人物を見て、彼は困ってしまった。
「昨晩は、どうも」
 あの女だった。
 長く茶色い髪の毛は丁寧に結い上げられ、黒いワンピースではなく、 カーディガンとスカートという、いかにも普通の服装だ。
「あの方は、帰ってしまわれたんですか?」
「・・・ああ。仕事が、あるからな」
「学者さんなのかしら、白衣を着てらっしゃったから・・・」
「あいつは、科学者だ」
「じゃあ、とても頭が良い方なんですね」
 単純に、しかしとても利口そうに、彼女は言う。
 夜でも賢い子に見えたが、今はさらにそう思える。
 女は僅かに目を伏せ、しばらく何かを考えるように口元に手を当てていた。そして、 意を決したように、それでも笑いながら、男を見上げる。
「あなたと何もなかったのは、少し、残念でした」
 そう言われたヴィンセントは、どう返して良いのか解らない。
 すまない、と言えば良いのか、そうか、と言えば良いのか。
 返事を期待してはいなかったのだろう、女は続ける。
「けれど、あれで良かったと思います」
「・・・・・・」
「恋人が来てくださったようですから」
「あいつは、恋人じゃない」
 目の前の男はまた、うんざりした「演技」をする。
 女は微笑む。
「あんな目をして、あんな声で名前を呼んでいたのに、私がその言葉を 信じていると思うんですか?」
 からかうような、それでも幸せそうな声。
 ヴィンセントはつい、笑ってしまう。
 女は、安心したように、持っていた紙袋を差し出す。
「昨日と同じシャンパンです。昨晩は、あまり飲まれなかったでしょう? けれど、もう、ガスが抜けてしまったと思うので、新しいものを お持ちしたんです」
 昨夜は暗闇で解らなかったが、そのシャンパンはジュノンでしか売られていない、 特別なものであるらしい。
 ヴィンセントは、遠慮なく受け取った。
「・・・ありがとう。ほんとうに」
 ほんとうに、と付け足したのは、無意識だった。
 その五文字に、たくさんの意味をこめて。
「こちらこそ」
 淡く微笑む女は、かすかに別れを惜しむように目を眇めた。





***





 もう、うんざりよ。
 ヴィンセントが帰ると、ルクレツィアは彼が差し出す土産の 菓子折りを受け取りながら言った。
「もう、うんざり」
 繰り返して、彼女はソファに身体を沈めると、綺麗な足を無造作に組んで 菓子折りの紐を解き始める。
「ワイネルのタルト!素敵ね」
 満足したように言う彼女の前に、ヴィンセントも座る。
 背後では、宝条が3人分のコーヒーを用意していた。
「なにが、うんざりなんだ」
「この3日間の、私の苦痛といったらなかったわ」
 つまらない恋愛映画ばかり、徹夜で20本近く!
「ここに入るたびに、わめく女の声ばかりなのよ」
 それから、つまらない言い訳をする男の声と、コートがほしくなるぐらい 寒いセリフと、派手なキスシーンと、ベッドシーンよ。
 心からうんざりしているように、彼女は説明する。
 実に具体的で解りやすいな、と宝条が横から言う。
 ルクレツィアは勢いのままヴィンセントを睨んだ。
「来年の誕生日は、絶対にここにいて」
 絶対に。
 その気迫に押され、ついヴィンセントは頷いてしまった。
「お茶にしよう」
 全く気を悪くする様子のない宝条が、いつものようにビーカーに 入ったコーヒーをテーブルに置く。
 その日、彼の胸ポケットにいつものノック式のボールペンではなく、 HBの鉛筆が刺さっているということを、ヴィンセントだけは 気付いていた。











 誕生日のヴィンセントの話。
 異様に長くなってしまいました。



 2005.10.15




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